2022年1月12日水曜日

Aaron Swartz追悼|アメリカ著作権法の成り立ちまで遡るポッドキャストを聴いて

1月、ということでAaron Swartzの追悼番組(ポッドキャスト)を聞いた。

番組は、Aaronについて本を執筆したJustin Petersが、"information wants to be free"―「つまり、情報はタダか?」という命題を軸に、ものすご~くわかりやすく、著作権の在り方、インターネットについて話してくれているインタビューだ。

↓この本です。

 

まず、有名なInformation wants to be freeについてのおさらいしよう。これは、ホールアースカタログのStewart Brandのフレーズに起因するが全文はもう少し長い、、、

"Information Wants To Be Free. Information also wants to be expensive. Information wants to be free because it has become so cheap to distribute, copy, and recombine---too cheap to meter. It wants to be expensive because it can be immeasurably valuable to the recipient. That tension will not go away. It leads to endless wrenching debate about price, copyright, 'intellectual property', the moral rightness of casual distribution, because each round of new devices makes the tension worse, not better."


そういえばちょうど今朝、こんなものをみていたところ。

今回紹介しているポッドキャストOntheMediaでのJustin Petersのインタビューは、なかなかアーロンの話にならない(笑)んだけど、そこが面白い。なんせこの本は、最初の3章をアメリカ建国期の著作権法の形成、とくに、辞書のイメージがまとわりついているノア・ウェブスターを中心に辿っていく。

まだ、文学や書籍がほとんどアメリカ国内で出版されていなかったころに教師をしていたウェブスターは、アメリカがせっかく独立したのに、英国の退屈な教科書を使ってアメリカのこどもたち英語を教え、ウェールズ地域の固有名詞でスペルを覚えさせるだなんて、恥ずかしいったらありゃしない!という思いから、その代替となるような本をつくって出版。自分で出版した書籍で食っていけるようにしたかったので、著作権法の成立に躍起になった。(アメリカ建国から100年くらいはほとんどまともな本がでていなくて、書籍とは金持ちが趣味で書いたもの=本は商材にならない、という状態だった)自分の本が売れるように、と著名人に押しかけたりしていた。


 ウェブスターがジョージワシントンの家でのディナーに招かれたときのこと。ジョージワシントンが「自分の子にはスコットランド出身の家庭教師を付けようとおもう」と話すのを聞いた20代の無名教師であるウェブスターは憤って、「せっかくアメリカが独立したというのにスコットランドから家庭教師を寄せるなんて英国はなんておもうでしょう、嘆かわしい!」と。そんなこんなでジョージワシントンから自分の書籍に大統領から帯コメント的なものをもらう。

そんなふうにして、著書は順調に売れ、著作権法も成立した。
その一方で、著作権法上の対象とならなかった海外の著作物については、出版社が今でいう海賊版を大量に刷って、安価に売って儲け放題だった。(これが出版ビジネスの始まりらしい、なんてこった!)

国際的な著作権が必要だと考えた著者たちは、倫理問題として、教会に展開。日曜のミサで、牧師がわかりやすく、海外作品を勝手に販売するのは倫理的ではない、人のものを盗んではならないはず、というようなことを説いていった。

ところがそうしているうちに、著者の権利をちゃんと守れば、みんな頑張って作品を世に出してくれる、そうれば世間も、いろんな本を読めてみんな幸せ。だから著者と出版社を中心に著作権を強化しよう、という流れになっていき、パブリックドメイン的な考え方はしぼむ。

パブリックドメインやオープンアクセスが盛り上がりを見せるには、マイケルハート(大学のPCを借りて使ってひたすらフリーの電子書籍化にはげむ人)による、プロジェクトグーテンベルクの登場を待つことになる。

(結局大学から追い出される、その時期は、人々がプロジェクトグーテンベルクの価値を理解し受け入れるようになった矢先だった)

マイケルハートと似てるところがあるよね、というのでようやくアーロンの話になる。長かったな、前置き。

アーロンが心打たれたチョムスキーの一冊はこちら。

あまり追悼になってない文章だがご容赦あれ。それにしても、the game don't change, just the playersな感じ。相変わらずだけど、いい年にしましょう。